天地人研究所 株式会社

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平成24年度の中学〈理科〉の教科書

■ 中学〈理科〉の教科書の配布のし方

中学〈理科〉の教科書は、平成24年度の新教科書から学年別配布(各学年1冊、3学年の合計で3冊)になることが明らかになりました。
(平成22年1月13日の官報・号外第7号1ページ2ページに掲載の「教科用図書検定申請受理種目・中学校・理科」の項を参照。)
従来の分野別配布(1分野と2分野がそれぞれ上巻・下巻に分かれ、3学年の合計で4冊)では難点が多々あり、それを根本的に解決するには学年別配布が望ましいことを、かねてよりこのWEBページでも指摘し、パブリックコメント(2008年2月21日付)でも述べておきましたが、その通りになったわけです。
学年別配布になることにより、難点は一挙に解決しました。

中学〈理科〉の教科書の配布をめぐる次の課題

■ 次の課題――学年進行での切りかえ

中学〈理科〉の教科書が学年別配布になったことにより、次々回の教科書改訂からは、新教科書を1年ずつ学年進行で発行していくことが可能になります。

次回すなわち平成24年度に限っては、中学1年~3年の全学年で同時に新教科書に切りかえる必要があります。その理由はここに述べた通りです。

したがって、次々回からは、新教科書への切りかえを1学年ずつ学年進行で行うことができます。このほうが、一人ひとりの生徒の立場からすると、一貫性があってよいと考えられます。

新教科書への切りかえを全学年で同時に行うと、その時点の新1年生はよいのですが、新2年生は「中学1年用の教科書+中学2年用の教科書+中学3年用の教科書」を使うことになり、新3年生は「中学1年用の教科書+中学2年用の教科書+中学3年用の教科書」を使うことになります。新1年生以外は、新旧2通りの教科書が混ざってしまいます。

学年進行での切りかえが全学年同時の切りかえよりも優れている点を、いくつか挙げてみます。

  • 学年を越えた参照が、ページを明示して指示できる。――新旧の教科書が混ざらないので、中学3年の教科書に「細胞のつくりについては、2年の教科書p.○○を参照」と書いたり、中学1年の教科書に「粒子については、2年の教科書p.××でさらに詳しく学ぶ」と書たりできます。
  • 学習内容を大きく変更変更する場合でも、「移行措置」が不要である。――学習指導要領が改定されるような大きな変更があっても、それを新1年生から学年進行で適用するとともに、学年進行で新教科書に切りかえていけば、複雑で間違いの起こりやすい移行措置なしで、新内容にすんなり移行できます。(たとえば、教科書に載っている「酸とアルカリの反応」を平成21年度の中1時にはやらず、補助教材を発行して平成23年度の中3時にやるというような、生徒にも教員その他の教育関係者にも複雑で、多大の労力と費用を要する事態は起こりません。補助教材を発行する必要も生じません。)
  • 教科書の切りかえ時に、学習内容や学習順序を思い切って変更できる。――たとえば、「力の単位をkg重からニュートンに変更し、仕事の単位をkg重mからジュールに変更する」ことは、学年進行の教科書切りかえと同時進行でやれば、ごく自然に実現します。(教科書を全学年同時に切りかえると、生徒を大混乱に陥れるでしょう。――今回の学習指導要領の改定で、教科書を全学年同時に切りかえるのに、仕事の単位にジュールを混乱なく導入できるのは、幸いにも!改定前の学習指導要領で仕事を扱っていなかったからです。)
  • ■ 学年進行での切りかえの実現方法

    平成24年度の全学年同時切りかえを最後として、そのあとは教科書を学年進行で切りかえていくには、次のようなスケジュールが考えられます。

  • 平成26年度 …… 中学1年を新教科書に切りかえる。
  • 平成27年度 …… 中学2年を新教科書に切りかえる。
  • 平成28年度 …… 中学3年を新教科書に切りかえる。
  • 平成29年度 …… 中学1年を新教科書に切りかえる。
  • 以下、同様に3年サイクルで1学年ずつ切りかえていくのです。
    このやり方は、教科書を中心とし練習問題集や資料集などを含む〈教材体系〉を作成・提供する現場を、絶えざる活動状態に置き、ひいては〈教材体系〉の質を高めるという、好ましい結果も将来するでしょう。

    これまでの「4年に1回の、全学年同時切りかえ」というやり方は、〈教材体系〉を作成・提供する現場を4年に1回=1年だけ異常な活動状態に置き、他の3年は休眠状態に置きます。――〈教材体系〉は、4年に1回改良されればいいものではなく、毎年毎年少しずつ改良を重ねていくべきものです。


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    以下は、教科書の学年別配布が決定・公表される以前に、分野別配布を前庭に難点と対策を検討したものです。




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    平成24年度の中学〈理科〉の教科書 ―― 問題点と対策

    ■ 中学〈理科〉の教科書の配布のし方

    小学校の教科書や中学校の数学・国語・英語の教科書は学年ごとに分かれていて、1学年で1冊(ないし、教科書が厚くなりすぎるのを避けるために、上・下の2冊)を使いきるようになっています。――従って、各学年のはじめにその学年の教科書が(無償で)配布されます。
    しかし、中学理科の教科書は、学年ごとになっていません。では、どうなっているか?
    まず大きく、第1分野(物理・化学の内容)と第2分野(生物・地学の内容)の2つに分かれています。そして、さらにそれぞれの分野が上巻・下巻の2つに分かれていて、全部で4冊を中学の3年間で使います。すなわち、上巻は中学1年と2年の前半で、下巻は中学2年の後半と3年で使います。

      第1分野(物理・化学) 第2分野(生物・地学)
    上巻(中学1年と2年の前半) 第1分野・上巻 第2分野・上巻
    下巻(中学2年の後半と3年) 第1分野・下巻 第2分野・下巻

    子どもは、中1のとき第1分野・上巻と第2分野・上巻の2冊をもらい(中2の前半まで使ったあと)、中2のとき第1分野・下巻と第2分野・下巻の2冊をもらい(中2の後半から中3の卒業まで使い)ます。
    これで分かるように、

    1. 中2の前半は、前年(中1のとき)もらった教科書(上巻)を使います。
    2. 中3は、 前年(中2のとき)もらった教科書(下巻)を使います。

    ■ 平成24年度の中学〈理科〉の教科書配布

    中学校の新指導要領は平成24年度から本格的に実施されると思われ、この年から新しい教科書(新指導要領に基づいて執筆・編集された新教科書)が配布され始めます。――前年(平成23年度)までは、現行の(旧指導要領に基づく)教科書が配布されます。

    中学1年

    平成24年度の中学1年は、新教科書の上巻をもらい、新指導要領の学習内容を新教科書で勉強するので、何の問題もなく、快適に学べます。

    中学2年

    上の教科書配布の原則をそのまま当てはめると、平成24年度の中学2年の前半は、前年(中1のとき)もらった旧教科書(上巻)を使いつつ、新指導要領の学習内容を勉強することになるので、いくつかの支障が出、それへの対策が必要になります。
    ● 平成24年度の中学2年〈理科〉 ―― 教科書配布の問題点と予想される対策

    中学3年

    平成24年度の中学3年は、前年(中2のとき)もらった旧教科書(下巻)を使いつつ、新指導要領の学習内容を勉強することになるので、同様に、いくつかの支障が出、それへの対策が必要になります。
    ● 平成24年度の中学3年〈理科〉 ―― 教科書配布の問題点と予想される対策

    まとめ

    理科の教科書について、平成24年度の中学1年〜3年に配布される(ないし、配布されると予想される)ものをまとめると、次のようになります。

    平成24年度の中学生全体では、新教科書を5冊(中1が2冊、中2が2冊、中3が1冊)と補充資料を2つ(中2が1つ、中3が1つ)配布する必要があります。

    中3の1冊は、普通なら(中2でもらったものを使うので)いらないものの二重配布です。補充資料2つも、普通ならいらないものの追加配布です。――二重配布や追加配布を行うには、当然、それなりの費用が必要であり、その費用は、国民の税金か、保護者か、教科書会社かが負担せざるを得ません。

    ■ 二重配布や追加配布の問題を根本的に解決するには

    平成24年度の中学〈理科〉の教科書に二重配布や追加配布が必要になるのは、そもそも、中学〈理科〉の教科書が学年別の3冊でなく、上の表のような4冊に分かれているからです。――1学年が第1分野と第2分野を合わせた1冊で、3学年で3冊という形になっていれば、平成24年度の中学全体で、新教科書を中1〜中3に1冊ずつ、合計3冊、配布すればそれで終わりです。旧教科書の欠落を補う補充資料もいりません。
    平成24年度から使われる中学〈理科〉の新教科書は、数学・英語・国語と同じように、学年別の3冊構成にすべきです。


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