2009・2010年度(平成21・22年度)の移行措置で中学3年〈理科〉に新しく追加される学習内容に授業時間を何コマ割り当てるかについて、教科書会社5社が示している案は次の通りです。――「東書」は東京書籍、「啓林」は新興出版社啓林館、「大日」は大日本図書、「学図」は学校図書、「教出」は教育出版の略。
大きな枠の中での各社の自由な工夫により、移行措置の実現方法がいろいろ多様に提案されつつあります。学校現場では、それらの案から自校の実状に最も近いものを選び出し、それをさらに改良する形で移行措置が行われることでしょう。
東書 | 啓林 | 大日 | 学図 | 教出 | ||
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仕事とエネルギー | +3 | +5 | +5 | +4 | +3 | 仕事とエネルギー |
水溶液の電気電導性 | +3 | +2 | +7 | +3 | +12 | 水溶液の電気電導性 |
原子の成り立ちとイオン | +5 | +5 | +3 | +2 | 原子の成り立ちとイオン | |
電池の電極で起こる反応 | +1 | +1 | +3 | +1 | 電池の電極で起こる反応 | |
遺伝の規則性と遺伝子 | +4 | +5 | +7 | +4 | +4 | 遺伝の規則性と遺伝子 |
月の運動と見え方 | +3 | +2 | +3 | +2 | +3 | 月の運動と見え方 |
合 計 | +19 | +20 | +28 | +16 | +22 | 合 計 |
この一覧表は、2009年(平成21年)3月11日現在の公表資料に基づいています。
中学3年は、学習内容が大幅に増加すると同時に、授業時間数が年間で25コマ増加します。この事情を反映して、各社とも授業時間を年間で16〜28コマふやしています。
「仕事とエネルギー」では〈東書〉と〈教出〉の配当時間の少なさが目立ちます。ここは、生徒が調べるというよりも教員が教える形の授業展開となり、授業時間をあまり必要としないとの判断に基づいているのではないかと想像されます。
『水溶液とイオン』の部分(=「水溶液の電気電導性」+「原子の成り立ちとイオン」+「電池の電極で起こる反応」)では、〈大日〉の配当時間の多さが目立ちます。また、〈東書〉では「原子の成り立ちとイオン」の最後の+1コマは発展で、塩化銅水溶液の電気分解と塩酸の電気分解をイオンのモデルでとらえます。
「遺伝の規則性と遺伝子」では、〈大日〉の配当時間の多さが目立ちます。『水溶液とイオン』でも〈大日〉の配当時間が多いことを考え合わせると、〈大日〉は新指導要領で新しく追加される学習内容にたっぷり時間を配当しようとしているようです。
配当時間の合計では、〈大日〉の多さ(28コマ増)と〈学図〉の少なさ(16コマ増)が目立ちます。