天地人研究所 株式会社
天と地とその中にすむ人 ―― 天地人 ―― あめつちひと
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中学〈理科〉の移行措置 ―― 2011年度(平成23年度)
文部科学省が2008年(平成20年)3月28日に告示した「中学校学習指導要領」第2章第4節〈理科〉および6月13日に告示した移行措置(学習内容や授業時間数)の中学〈理科〉部分などをもとにすると、2011年度(平成23年度)の移行措置は次のようになります。
■ 中学1年 ―― 2011年度(平成23年度)の移行措置
前年と、従って前々年と同じです。
■ 中学2年 ―― 2011年度(平成23年度)の移行措置
前年と同じです。
■ 中学3年 ―― 2011年度(平成23年度)の移行措置
- 前年(=前々年)の中学3年での学習内容に対して、次の変更を加えます。
変更が大幅である(特に第1分野)にもかかわらず,「中2時点で配付ずみの旧教科書をできるだけ使用しつつ、不足を(なるべくページ数の少ない、1色刷の)補助教材で補う」という苦肉の策がとられるため、単元の割り方や学習順序が旧来のままとなる(新指導要領的にならない)もようです。また、同じ理由により、学習内容が2012年度(平成24年度)以降の新指導要領とは微妙に異なる事態が生じます(あとで、理由もふくめて詳述)。
- 物理の領域
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【運動の規則性】で、「力がつり合う条件」「力の合成と分解」を追加する(いずれも補助教材に掲載)。――「力がつり合う条件」は中学1年で学んでいましたが、ここに移し、「力の合成と分解」まで深めます。
【力学的エネルギー】では、「位置エネルギーと運動エネルギーが互いに移りかわること」「摩擦や空気の抵抗がなければ、両者の和(力学的エネルギー)は保存されること」「実際の運動では摩擦や空気の抵抗があるので、力学的エネルギーの一部が音や熱などに変わり、保存されないこと」を旧教科書で学びます。
また、新指導要領では〈科学技術と人間〉の領域の【エネルギー】に移動する「電気・熱・光など様々なエネルギーの移りかわりと保存」も、旧教科書を使用するという事情に鑑み、ここで一緒に旧教科書で学ぶとともに、その行きがかり上さらに、【エネルギー】で新しく追加される「エネルギーの変換効率(エネルギーを変換して利用するときには、一部が利用目的外のエネルギーに変換されてしまうので、利用の効率を高めることが大切であること)」「熱の伝わり方(伝導・対流・放射)」もここで学びます(いずれも補助教材に掲載)。
削除はなし。
- 化学の領域
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【水溶液とイオン】で、「日常生活や社会で利用されている代表的な電池」、具体的には乾電池・鉛蓄電池・燃料電池などを追加する(旧教科書のコラムなどを利用)。
【酸・アルカリとイオン】で、「酸と水素イオン」「アルカリと水酸化物イオン」「pH」「中和反応で水と塩ができること」「塩には、水に溶けるもの(塩化ナトリウムなど)と溶けないもの(硫酸バリウムなど)があること」を追加する(いずれも補助教材に掲載)。――「酸とアルカリ」「中和と塩」は、2008年度(平成20年度)まで中学1年で簡単に学んでいましたが、2011年度(平成23年度)から中学3年のここに移し、イオンの知識に基づいてより深く学びます。
「酸化と還元」「化学変化にともなう熱の出入り」を削除する。――これらは中学2年時に学習ずみです。
- 科学技術と人間の領域
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【エネルギー】では、「放射線の性質と利用」を追加する(補助教材に掲載)。
【科学技術の発展】はおおむね旧教科書を使って学習します。
削除はなし。
- 生物の領域
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追加はなし。
「生物の体は細胞からできていること」「植物細胞と動物細胞のつくり」を削除する。――これらは中学2年時に学習ずみです。
- 地学の領域
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追加も削除もなし。
- 自然と人間の領域
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追加も削除もなし。
ただし、旧指導要領の【自然と人間】が選択から必修に変更されます。
- 中学3年間の理科学習の総まとめ
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【自然環境の保全と科学技術の利用】は1分野と2分野の枠を取りはらって総合的に取り組むこととし、「持続可能な社会をつくることの大切さ」を追加するとともに、「科学的な根拠に基づいて意思決定を行わせる場面」を設けることになっています。この趣旨が旧教科書で実現できると判断されれば、旧教科書1下の最後の部分を使って学習することになり、実現できないと判断されれば、補助教材もあわせ使って学習することになります。
これを新指導要領と比較すると、次の学習内容が追加されずに軽減されています;「斜面上の物体の運動を力の分解に基づいて理解すること」「自由落下」「惑星の大気組成・表面温度」「太陽系に惑星以外の天体が存在すること」「銀河系」「生態系」「地球の温暖化」「外来種」「地球規模でのプレートの動き」。
力の分解を学ぶにもかかわらず「斜面上の物体の運動を力の分解に基づいて理解すること」が軽減されるのは、【運動の規則性】の「力と運動」は新指導要領ではなく、旧指導要領が適用されることになっているからです。
「自由落下」が軽減されるのは、【運動の規則性】の「力と運動」は旧指導要領が適用されることになっており、その内容の取扱いに「落下運動については自由落下ではなく斜面に沿った運動を扱い、……」と書かれ、さらに、その解説書(文部科学省著、平成11年9月発行)のp.44に「自由落下運動は扱わない」と明記されているからです。
「惑星の大気組成・表面温度」「太陽系に惑星以外の天体が存在すること」「銀河系」が軽減されるのも、理由は上と同様です。
「生態系」「地球の温暖化」「外来種」「地球規模でのプレートの動き」が軽減されるのも、理由は上と同様です。
このように微妙な事態が生じるのは、文部科学省が2008年(平成20年)に告示した移行措置を、3~4年の時間が経過し状況が変化しているにもかかわらず、四角四面に適用するためです。告示時点では、教科書の形態が分野別から学年別に変更になることさえ、未定でした(分野別が踏襲されると、暗黙のうちに、前提されていました)。
こんな細かいことが学校現場のすみずみまで徹底するとは考えられません……。もっと柔軟な対応もあるはずですが、そしてその方が生徒も教員も負担が少なくて幸福であると考えられますが、文部科学省はそのような対応をとらないようです。「もっと柔軟な対応」の具体的な内容はここを参照してください。
授業時間数は、週4コマ(前年・前々年より1コマ増、旧指導要領より1.7コマ増)です。
■ 教科書の補充資料=「補助教材」 ―― 2011年度(平成23年度)
2011(平成23)年4月時点では、生徒は旧教科書(中2のときに配付された下巻)を持っています。追加事項のうち、旧教科書下巻には載っていない学習内容については、欠落を補充する「補助教材」が作成され、生徒全員に配布されます。
2011年度(平成23年度)中学理科の配布物は次の通りです。
中学1年 …… 旧教科書1分野上巻 + 同2分野上巻 + 中学1年用の補助教材
中学2年 …… 旧教科書1分野下巻 + 同2分野下巻 + 中学2年用の補助教材
中学3年 …… 中学3年用の補助教材
中学1年への配布物3点と中学2年への配布物3点の合計6点は、いずれも前年度と同じものです。しかし、中学3年用の補助教材は、上記のような学習内容の追加があるため、新たに作成されます。
常在成長(じょうざいせいちょう) ―― いつでもどこでも成長できる