文部科学省が2008年(平成20年)3月28日に告示した「中学校学習指導要領」第2章第4節〈理科〉および6月13日に告示した移行措置(学習内容や授業時間数)の中学〈理科〉部分などをもとにすると、2011年度(平成23年度)の移行措置は次のようになります。
前年と、従って前々年と同じです。
前年と同じです。
これを新指導要領と比較すると、次の学習内容が追加されずに軽減されています;「自由落下」「惑星の大気組成・表面温度」「太陽系に惑星以外の天体が存在すること」「銀河系」「生態系」「地球の温暖化」「外来種」「地球規模でのプレートの動き」。
「自由落下」が軽減されるのは、【運動の規則性】の「力と運動」は新指導要領ではなく、旧来からの現行指導要領が適用されることになっており、その内容の取扱いに「落下運動については自由落下ではなく斜面に沿った運動を扱い、……」と書かれ、さらに、その解説書(文部科学省著、平成11年9月発行)のp.44に「自由落下運動は扱わない」と明記されているからです。
「惑星の大気組成・表面温度」「太陽系に惑星以外の天体が存在すること」「銀河系」が軽減されるのも、理由は上と同様です。
「生態系」「地球の温暖化」「外来種」「地球規模でのプレートの動き」が軽減されるのも、理由は上と同様です。
文部科学省が告示した移行措置を四角四面に適用するとこのような事態が生じますが、しかし、
(1)授業時数が新指導要領と同じ(年140コマ)になること
(2)平成23年4月時点で、新指導要領に基づく新教科書が実質上出来上がっていること
を考慮すれば、このような軽減はやめにして、きっぱり新指導要領を適用する(=実質上出来上がっている新教科書を「補助教材」として生徒全員に配布する)べきです。
授業時間数は、週4コマ(前年・前々年より1コマ増、旧指導要領より1.7コマ増)です。
2011(平成23)年4月時点では、生徒は旧教科書を持っています。追加事項は旧教科書には載っていない(載っていても「発展」あつかいである)ため、欠落を補充する「補助教材」が作成され、生徒全員に配布されます。
2011年度(平成23年度)中学理科の配布物は次の通りです。
中学1年 …… 旧教科書1分野上巻 + 同2分野上巻 + 中学1年用の補助教材
中学2年 …… 旧教科書1分野下巻 + 同2分野下巻 + 中学2年用の補助教材
中学3年 …… 中学3年用の補助教材
中学1年への配布物3点と中学2年への配布物3点の合計6点は、いずれも前年度と同じものです。しかし、中学3年用の補助教材は、上記のような学習内容の追加があるため、新たに作成しなければなりません。
とはいえ、この時点で、新指導要領に基づいた新教科書(これまでのような分野別ではなく、学年別の新教科書)が実質上でき上がっています。すなわち、文部科学省の検定を受け、修正を完了した新教科書が、見本として展示できる状況です。したがって、わざわざ労力と費用をかけて「中学3年用の補助教材」を作成・配布する必要はなく、実質上でき上がっている新教科書を配布するのが単純明解です。
――新教科書を配布するとともに、上に指摘した「自由落下」等の軽減をやめ、新指導要領をきっぱり適用するのが、生徒にとっても教員にとってもその他の関係者にとっても最上の策です。
この策をとる場合、2011年度(平成23年度)中学理科の配布物は次のようになります。
中学1年 …… 旧教科書1分野上巻 + 同2分野上巻 + 中学1年用の補助教材
中学2年 …… 旧教科書1分野下巻 + 同2分野下巻 + 中学2年用の補助教材
中学3年 …… 実質上でき上がっている新教科書・中学3年
中学1年への配布物3点と中学2年への配布物3点の合計6点は、いずれも前年度と同じものです。