天地人研究所 株式会社
天と地とその中にすむ人 ―― 天地人 ―― あめつちひと
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小学〈算数〉の「消極的な移行措置」の予想
■ 必要最小限のことのみをする場合
小学校の新指導要領は平成23年度から、中学校の新指導要領は平成24年度から、本格的に実施されると思われます。
小学〈算数〉の必要最小限の移行措置(子どもに学習内容の欠落や重複が生じないようにするための移行措置)を決めるためには、小学だけでなく、中学まで見通した広い視野が必要です。文部科学省の「小学校算数科の内容の改善イメージ(案)」のホームページおよび「中学校数学科の内容の改善イメージ(案)」のホームページをもとにすると、必要最小限の移行措置には2年間が必要であり、具体的には次のようになると考えられます。
ただし、文部科学省の上記ホームページが最終決定を示すものではないため、以下の予想も変わる可能性があります。
平成21年度
●小学4年 ← 新指導要領実施時の小学6年
- 旧指導要領の小学4年での学習内容に対して、
『およその数』について「計算の見積り」を追加する。
『図形』について「直方体・立方体」を追加する。
- この内容は小学6年時に学習しない(新指導要領で小6から小4に移動する)ので、学習の欠落を避けるため、小学4年のこの時点で学んでおく必要があります。
●小学5年 ← 中学校の新指導要領実施時(平成24年度)の中学2年
- 旧指導要領の小学5年での学習内容に対して、
『図形』について「形と大きさが同じ図形(合同)」を追加する。
- これは旧指導要領の中学2年の学習内容ですが、新指導要領で学習時期が小学5年に降りてくるので、学習の欠落を避けるため、小学5年のこの時点で学んでおく必要があります。(中学校の新指導要領は、これらが学習ずみであることを前庭としています。)
平成22年度
●小学1年 ← 新指導要領実施時の小学2年
- 旧指導要領の小学1年での学習内容に対して、
「時刻のよみ方」を追加する。
- この内容は小学2年時に学習しない(新指導要領で小2から小1に移動する)ので、学習の欠落を避けるため、小学1年のこの時点で学んでおく必要があります。
●小学2年 ← 新指導要領実施時の小学3年
- 旧指導要領の小学2年での学習内容に対して、
「かさの単位」「時間の単位」を追加する。
「正方形・長方形・直角三角形」「箱の形」を追加する。
- この内容は小学3年時に学習しない(新指導要領で小3から小2に移動する)ので、学習の欠落を避けるため、小学2年のこの時点で学んでおく必要があります。
●小学3年 ← 新指導要領実施時の小学4年
- 旧指導要領の小学3年での学習内容に対して、
『小数』について「小数の意味と表し方」「簡単な小数(小数第1位まで)の加・減」を追加する。
『分数』について「分数の意味と表し方」「簡単な分数(同分母の真分数)の加・減」を追加する。
『図形』について「二等辺三角形・正三角形」「角」「円と球」を追加する。
- この内容は小学4年時に学習しない(新指導要領で小4から小3に移動する)ので、学習の欠落を避けるため、小学3年のこの時点で学んでおく必要があります。
●小学4年 ← 新指導要領実施時の小学5年
- 旧指導要領の小学4年での学習内容に対して、平成21年度の小学4年に対する措置に加えて、さらに
『分数』について「同分母分数の加・減」を追加する。
『図形』について「平行四辺形・ひし形・台形」を追加する。
- この内容は小学5年時に学習しない(新指導要領で小5から小4に移動する)ので、学習の欠落を避けるため、小学4年のこの時点で学んでおく必要があります。
●小学5年 ← 新指導要領実施時の小学6年
- 旧指導要領の小学5年での学習内容に対して、平成21年度の小学5年に対する措置に加えて、さらに
『整数の性質』について「約数と倍数」を追加する。
『分数』について「異分母分数の加・減」を追加する。
『体積』について「体積の単位と測定」「立方体・直方体の体積の求め方」を追加する。
『異なる2量の割合』について「速さ・人口密度などの求め方」を追加する。
『図形』について「柱体」を追加する。
- この内容は小学6年時に学習しない(新指導要領で小6から小5に移動する)ので、学習の欠落を避けるため、小学5年のこの時点で学んでおく必要があります。
- 『面積』について「円の面積の求め方」を削除する。
- この内容は小学6年時に(新指導要領で)学習するので、小学5年のこの時点で学ぶ必要はありません。――学習の重複を避けるための措置です。
●小学6年 ← 中学校の新指導要領実施時(平成24年度)の中学2年
- 旧指導要領の小学6年での学習内容に対して、
『図形』について「形が同じ図形(拡大図と縮図)」を追加する。
『資料の調べ方』について「起こりうる場合の数を調べる」を追加する。
- 前者は旧指導要領の中学3年、後者は中学2年の学習内容ですが、新指導要領で学習時期が小学6年に降りてくるので、学習の欠落を避けるため、小学6年のこの時点で学んでおく必要があります。(中学校の新指導要領は、これらが学習ずみであることを前庭としています。)
■ 問題点と対策 ―― 「平成22年度へのしわ寄せ問題」をめぐって
学習内容に欠落や重複が生じないようにするための必要最小限の措置(消極的な移行措置)は、上の通りです。
平成22年度が「追加だらけ」になるのは、学習時期が1学年くり下がる事項がたくさんあるからです。――普通なら、上から降りて来る学習内容が追加されるのと同時に、下に降りて行く学習内容が削除され、差し引きでほぼ均衡が取れるはずです。しかし、平成22年度に限っては、下に降りて行く学習内容を(前学年でまだ学んでいないので)削除できません。学年移動のしわ寄せが、平成22年度に一気におし寄せます。これを「平成22年度へのしわ寄せ問題」と呼ぶことにします。
これは大問題であり、ぜひ対策が必要です。――具体的に何が可能かといえば、次のようなことが考えられます;
- 平成22年度に限り、算数の授業時間数をふやす。――小3〜小6は、総合的な学習の時間をその分だけへらす。
- 平成22年度へのしわ寄せの二分の一ほどを平成21年度に前だおしし、しわ寄せを2年間に分散する。
後者(上記の2)は、例えば次のページに示すようになり、これはぜひやるべきだと思われます。
●小学〈算数〉の「消極的な移行措置」の予想――改良型の一例
それでも授業時間数が不足する場合は、合わせて前者(上記の1)も行うべきでしょう。
この「消極的な移行措置」だけに止どまらず、新指導要領で新たに加わる学習内容の一部を前だおしして追加し、「積極的な移行措置」が行われる可能性もあります。しかし、平成22年度へのしわ寄せ問題をクリアするのが移行措置2年間の最優先課題であり、積極的な移行措置にまで踏みこむ余裕はないというのが実状ではないでしょうか。
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