天地人研究所 株式会社
天と地とその中にすむ人 ―― 天地人 ―― あめつちひと
―― 実生活のいろいろなところに成長のきっかけがある ――
学習指導要領の改定と学習評価の観点の変更――理科
文部科学省は「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善について(答申)」の144ページで、「学習評価の改善」という見出しのもとに、
評価の観点……(中略)……について、……(中略)……より一層簡素で効率的な学習評価が実施できるよう
に検討することを表明しています。
では、どのように変更されるのでしょうか。理科について、まず旧状を確認したあと、変更後の新しい姿を予想してみましょう。
■ 理科の旧観点 ―― 4つ
理科の学習評価の旧観点は、旧指導要領にともなうもので、次の4つです。
- 知識・理解
- 自然とそれを構成するいろいろなもの(生物・物質・物体……)について、知識があるか。また、それらそれぞれの内部に構造があること、それらの変化に決まりがあること、それらが互いにつなが合っていることを理解しているか。
- 観察・実験の技能・表現
- 観察・実験を正しく安全に実行できるか。また、その内容を記録したり、レポートにまとめたり、発表したりできるか。
- 科学的な思考
- 自然とそれを構成するいろいろなもの(生物・物質・物体……)の中に見出した問題を解決するために、観察・実験の計画を立てることができるか。観察・実験の結果やその他の知識にもとづいて、合理的に考え、問題を解決できるか。
- 関心・意欲・態度
- 自然とそれを構成するいろいろなもの(生物・物質・物体……)に関心があり、それらの中に問題を見出すことができるか。それらに自らはたらきかけ、問題を解決しようとするか。また、自然を愛し、生命を大切にするか。
学習評価の観点は、子どもの姿を、〈理科〉という1教科丸ごととしてだけでなく、さらに細かく分けてつかむための「目のつけどころ」です。
小学理科の評価教材(テスト)は、多くのものが、1枚ずつ紙面を
- 表面・左段 …… 「知識・理解」の問題
- 表面・右段 …… 「観察・実験の技能・表現」の問題
- 裏面・上段 …… 「科学的な思考」の問題
- 裏面・下段 …… 「関心・意欲・態度」の問題
というように4分割し、1〜3にそれぞれ50点満点の配点をつけるような構成になっています。
この構成は、評価する側(教員)にとっては好都合です。しかし、評価される側(子ども)にとっては、学習評価の観点に合わせて無理やりに作られた問題を解かされることになり、迷惑だと考えられます。
4つの観点の名称は確定していますが、それぞれの観点の内容については、人により、学校により、多少のゆれがあります。――ゆれがあることは、学習評価の観点をよりいっそう学校現場の実状に合ったものにするために、いいことだと考えられます。
■ 理科の新観点の予想 ―― 3つ
上の4つが1つへらされ、新指導要領にともなう新観点は、次の3つになると予想されます。
- 知識・理解・技能
- 旧の「観察・実験の技能・表現」の技能面、すなわち、観察器具(ルーペ・顕微鏡……)、測定器具(温度計・上皿天秤・電流計……)、加熱器具(アルコールランプ・ガスバーナー……)などを正しく安全に操作して観察・実験を行う能力の面を、旧の「知識・理解」と統合して、新しく「知識・理解・技能」とする。
- 科学的な思考・表現
- 旧の「観察・実験の技能・表現」の表現面、すなわち、観察・実験の内容を記録したり、レポートにまとめたり、発表したりする能力の面を、旧の「科学的な思考」と統合して、新しく「科学的な思考・表現」とする。
- 関心・意欲・態度
- これは、旧の「関心・意欲・態度」をそのまま受け継ぐ。
この新観点の方が、すっきりして分かりやすく、使いやすいと思われます。
学習評価の観点は、いつ変更されるのでしょうか。
最もありそうなのは、新指導要領が完全に実施されるのと同時(小学校は2011年度=平成23年度から、中学校は2012年度=平成24年度から)の変更です。
しかし、変更の内容が「簡素化」であり、変更の目的が教員の事務負担を軽減して「子どもたちと向き合う時間を確保する」ことにある点を考慮すると、前だおしして、移行措置の期間中に変更が行われる可能性もなしとしません。
常在成長(じょうざいせいちょう) ―― いつでもどこでも成長できる